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安曇野市土地利用委員会(其の十) [安曇野・穂高]

この“土地利用シリーズ”も回を重ねて十回目のエントリーとなりました。
実際の会議はそれよりさらに多くの回数を重ね、委員会発足から来月で丸一年。
まだ消化不良な部分も少なくないですが、それでも徐々に取りまとめも進みつつある状況です。
特に分科会形式で進行している最近では少人数ゆえに意見も出やすい環境になる為か、
どの分科会の報告資料を見てもより具体的な意見が出ているように見受けられます。
せっかくの機会なので私も常日頃感じていることをストレートに表現させてもらっていますが、
市民生活を市民自らがその目線で考え、こうしてみんなで話し合う場というものが
行政の取りまとめによる委員会だけでなく、街のあちらこちらで見受けられるようになれば
より質の高いまちづくりへと発展していけるのだろうなあ、と思ったりもしています。

次回は19日に全体会議の開催予定。
分科会で討論されてきた内容を改めて確認しつつ、より具体的な提案に
移行していくということになっていくでしょう。

建物形態分科会の直近は7日に実施したのですが、
そこでは前の回に取り扱った拠点・準拠点・大きな集落・小さな集落といった割付単位で
各区域ごとに必要とされる(工夫できる)建物形態について意見を出し合うというものでした。
特に意見の集中したのは大きな集落・小さな集落と便宜上呼称している郊外エリアの扱いで、
そのなかでも特に近年の開発行為が急激に進んだ穂高エリアが話題にのぼっていました。

で、検討にあげられた個別項目としてはこれまで同様に
敷地の規模・配置、建物高さ、色彩・形状・素材、壁面後退や緑化、その他全般といった具合。

敷地の規模や建物の配置という点においては
「新しい分譲宅地は狭すぎて、緑化推進といっても敷地に余裕がなくて難しい」という意見があり、
これについては(分譲可能な)敷地面積を拡げるべきでは?、という方策があげられました。
例えば穂高で250㎡以上と定められているエリアの分譲地一筆の下限を一段引き上げる、など。
現実問題としてその場合は市民の宅地購入の経済的負担が増えることも大いにありえる話ですが、
その点についての議論はこの会議の席上においてはあえて割愛です。

建物高さや色彩・形状・素材といった点についての課題では
「昔ながらの小さな集落内に建つ現代的な住宅に違和感を覚える」というものがありました。
例えば本棟造りをはじめ伝統的な民家建築が多く建ち並ぶ古い集落内に
今風の仕上げ材を用いた住宅ができ、それが地域の景観にそぐわないという意見です。
建築……とくに個人住宅に限った話をすれば、外観などの意匠検討は
建築主の自由の範疇であるというのがこれまでの社会全般の一般的な考え方ですが、
地域の成り立ちとか伝統、風景などを全く無視して存在する個性というのもいかがなものか、
という考えには私も同調する考えを持っています。

建築屋として住宅設計に携わる者として、意匠性は本来規制されるべきテーマではなく
それぞれの個性が尊重されるなかで社会に貢献されるべきものであると思いますが、
一方で個人住宅は経済的には純然たる個人資産であってもその外観面の印象は
地域社会の重要な構成要素に違いなく、極端な表現で誤解を恐れずに言えば、
個人住宅もまた公共建築のひとつと言えなくもないと思います。

地域(集落)の伝統や景観、それらすべてを包括した(日常)風景の上に立つ個性。
「じゃあ風景に馴染む外観とそうでないものとはどこで線引きするんだ?」と問われても
答えに窮してしまうというか、デリケートな問題なので簡単に言える話ではないのですが、
まずは住民一人ひとりが家づくりとか暮らしづくりを考えるなかで、個性と地域性のバランスを
頭の片隅に置くことからスタートしてみれば、それだけでも取っ掛かりとしては十分だと思います。

少なくとも言えるのは、地域の伝統とか安曇野の風景に馴染む外観とかいっても
決して昔ながらの“いぶし銀の瓦”や“木造真壁しっくい塗り”で仕上げた家だけを
是とする訳ではないということ。新しい技術や仕上げ材や工法でも安曇野らしさは
当然ながら形作ることは出来るわけで、古くからある伝統の上に新しい何かが
積み上げられてこそ、持続可能な安曇野の景観形成が成立するのだろうとも思います。

私たち建築屋の側としても個別案件を検討し設計を進めていくなかで
建築主の個性や希望と同時に地域社会との関わりも同時進行で考えていけるような、
そんな企画を継続していかなければ行けないのだろうと思います。
地域性とかを考えていく先で、家づくりの面だけでなくて日常生活全般における
地域コミュニティーの在り方を考えるきっかけに繋がる良い流れが出来るとも思いますし。

分科会ではこれらの課題や方策以外に以下のようなものも意見として出されました。
「建物一体の看板や広告物は違和感が大きい(拠点・準拠点など市街地エリア)」
「建物高さは全市的に基本高さを決め、地域によって強化・緩和できる仕組みがよい(全般)」
「アパートなどの今後の開発には一定の制限が必要ではないか?(B及びCなどの集落地域)」
「(上記課題で)アパートの空室率で新規アパート建築の制限方法など考えられないか」

その他いろいろ出ましたが、最後に
「景観問題などは市民一人ひとりの理解と関心を促進することが大切で、
そのためのきっかけやしくみを早急に打ち出すことも必要」
という感じの意見を出して、今回の分科会はお開きとなりました。

他の分科会での検討課題についても、とても関心があるのですが、
自分がその会合に出席していないのでなんともコメントしづらくて。
次の全体会議の席上でいろんな報告があると思うので、
気になる点など質問出来ればと思っています。
とくに穂高地区の土地利用で個人的に関心が高いのは、
山麓別荘・観光地の今後のあり方について。
自分が仕事でこれまで深く携わってきたエリアのことですし、
他の委員さんの考えなどとても興味があります。


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