SSブログ

豪雪被害と積雪荷重 [暮らし]

昨年末より降り続く大雪が全国各地で多大な被害を発生させている、というニュースが
連日連夜、テレビニュースや新聞などで報道され続けています。
直接間接問わず、今シーズンの雪害によって亡くなられた方の数が
すでに80名を超えているとのこと。
同じ自然災害でも台風や地震などとは異なり長い期間のうちに広がった
人的被害の大きさに驚きを隠しきれません。
亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

安曇野の中でも穂高の市街地エリアは例年よりも降雪日数が多いとはいえ、
積雪量という点では日常生活への影響はほぼゼロといっていいほど。
むしろ水道管破裂を誘発する低温日の連続するほうが厄介な問題でして。
安曇野地域に限らず県内各地で水道管破裂の被害が発生しており
水道業者も大忙しという具合だそうです。

で、今日のブログは低温問題ではなくて豪雪問題のほうをとりあげますが、
特に今年の雪で特徴なのが、屋根に積もった雪が滑り落ちないということなんだそうです。
つまり、雪の自然落下を期待して作られた急勾配などの屋根で
例年なら積雪が自然に軒先から滑り落ちていたものが
今年はなかなか思うように落下してくれないというもの。
当然ながら屋根には重い雪がどんどんと降り積もり、雪下ろしをしようにも
もともと雪下ろしを不要とするほどの急勾配にした屋根だったりすると
人が登って作業することも大変な困難を生じさせる訳です。

屋根雪が落ちにくくなっている要因は、マスコミの報道などによると
軒先の雪が平年以上の厳しい寒さによって凍結して自然落下を堰き止めてしまい、
結果その上にどんどんと降雪が堆積していってしまうということのようです。

屋根に積もった雪がどれほどの重さかというと、
1㎡あたり、およそ2キロから3キロ。(多雪地帯では3キロで荷重計算します。)
それが1m積もると300キロ(=1立米)となるわけで、
屋根の水平投影面積(=真上から屋根を眺めた時の面積)が
仮に100㎡ほどだとすると、全体に1mの積雪でおよそ30トンの
荷重が存在することになるわけです。

で、いったい住宅の屋根がどれくらいの重さまで持ちこたえられるのかというと、
これは家ごとに構造や納まりが異なるのでなんとも言えない部分があります。
ただ、通常はどんな家でも屋根にかかる積雪荷重というものを計算しているはずですから、
その荷重計算の元になる積雪量がどの程度のレベルで設定されているかを
確認すればよいわけです。
ここでいう積雪量というのは「垂直積雪量」といって、
全国各地方ごとに設定されている数値のことをいいます。
「まあこれくらいは積雪することを想定しなくちゃいけませんよ」という基準ですね。
普段は積雪の心配が殆どない地方では関心をもたれることも少ないのですが、
長野県など多雪エリアの多い地方は絶対に欠かすことの出来ない大切な指標です。
例えば穂高町エリアですと、だいたい70cmから80センチの間くらい。
これが白馬村あたりに行くと3m80cmなど、4m近い数値が設定されたりしています。
これを元に1㎡あたりの単位重量(場所により2キロ~3キロ)や
屋根の面積などを掛けたりして総重量を計算する訳です。

もっとも、豪雪の白馬村とはいっても、実際に人の暮らしている住宅の屋根で
3mも4mも積もったままほったらかしなんていう状況は考えられません。
或る程度降り積もったら人が登って雪下ろし作業を行うか、
あるいは上述のように自然落下式の屋根形状にするなどの構造を採用しています。
なので、雪下ろし作業などを行うことを前提に上記の垂直積雪量の数値は
「1m50cm(←白馬村の例)まで数値を減らして計算してもいいですよ」という
低減措置を採用してもよいことになっています。
いま多雪地域で新築されている住宅の殆どは、こうした低減数値を利用して
荷重計算していると思います。
というか、そうしないで4m近い積雪量のままで荷重計算すると
それだけ小屋組の部材数量の増大や部材断面の拡大が必要となり、
その荷重を支える1階や2階の壁の量も相当に必要となり、
窓のない壁だらけの家になってしまうわけで、現実的ではありません。

白馬村の例で挙げた1m50cmという数値は
急勾配の屋根であればまず積もる心配のない積雪量です。
また白馬の例に限らず、万が一規定の垂直積雪量以上の屋根雪となったにしても
すぐに危険な状況に陥らないよう、いつも積雪荷重の計算では
安全率にかなり余裕をみるよう心掛けてはいますが、
それでも今年のような特異な状況は軽視出来ないものだと感じています。
現状では多雪地域の単位荷重は“3キロ/平米”ですが、
今年の湿雪は相当重いようなので、もしかしたら見直しの必要もあるかもしれません。

それに考えなくてはいけないのは単純な垂直荷重だけではなく、
落雪後の雪の処分なども敷地内の配置計画で検討せねばいけませんし、
軒先の凍結による“すがもり”(屋根上の雪解け水が軒先の結氷で堰き止められ
屋根葺き材の裏側へ侵入して室内へ漏れてしまうような症状)の問題もありますし、
いろいろ考えなくてはいけないことは山ほどありますね。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:住まい・インテリア・雑貨(旧テーマ)

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。